子どもに見せたいアニメや映画

一保育士がタコピーの原罪を見たら 前編

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子どもに見せたいアニメや映画

こんにちは。

いつも子どものみかたブログをお読みいただきありがとうございます!

 

今回は以前にも取り上げましたアニメ『タコピーの原罪』(『少年ジャンプ+』(集英社)において、2021年12月10日から2022年3月25日まで連載)について考えてみたいと思います。

〈ドラマ白夜行とアニメ「タコピーの原罪」が問いかける:子どもの罪と、大人の責任〉

ドラマ「白夜行」とアニメ「タコピーの原罪」が問いかける:子どもの罪と、大人の責任
子どもが罪を犯すとき、その背景にどんな現実があるのでしょうか? ドラマ『白夜行』とアニメ『タコピーの原罪』を通して、「子どもに必要だったもの」「大人ができたこと」について考えます。気づく勇気、関わる覚悟を持つために。今、私たちにできることを一緒に考えてみませんか?

 

このアニメは、児童福祉を生業とする私にとっては、1話1話しっかりとかみしめてそのメッセージを受け取らないと!って思いましたので、1話ずつ振り返ってみたいと思います。

第1話『2016年のきみへ』

ハッピーを広めるため、ハッピー星から地球にやってきたタコピー。

公園にある土管に住んでいましたが、食べるものに困っていてお腹を空かしていました。そこで、小学校4年生の少女『久世しずか』ちゃんがタコピーを見つけ、学校の給食の残りのパンをあげます。

このパンをあげるという行為をしずかちゃんの心からの厚意とタコピーは受け止めます。このことが後にも効いてきます。

また、初めはタコピーはタコピーという名前ではありませんでした。自分の名前を伝えても言語がわからないしずかちゃんには、意味不明な言葉にしか聞こえません。そこでしずかちゃんは、図鑑を取り出し、タコに似ているので、『タコピー』と名付けます。このシーンも、しずかちゃんは何気なく似ているからと名付けたのかもしれませんが、実際の名前とは違うあだ名やニックネームをつけて呼ぶというのは、とても親近感が持てて、ある種の親密さを表すものに変わっていきます。

そしてタコピーはハッピーを広げるための道具『ハッピー道具』を出して、どうにかしてしずかちゃんを笑顔にしたいと頑張りますが、なかなかうまく行きません。その中の一つにパタパタつばさという道具があります。この道具は身につけると空を自由に飛べるというものですが、あのアニメのアレを想起しますが、それは後程考えるとして、しずかちゃんは、空を自由に飛べるようになるという夢のようなことすら興味を持つことが出来ませんでした。

空を飛べるというような、普段の生活にさらにプラスαで色どりを与えるというようなことよりも、今日明日生きられること、そのことだけで精一杯という状態でした。

そのような状況に置かれていたしずかちゃんでしたが、タコピーはまりなちゃんと喧嘩をしていると思い、仲直りをさせようと仲直りリボンという道具を出すと、しずかちゃんはそれを自分の人生を終わらせて楽になるという道具に使ってしまいます。

1話目から物凄くショッキングな出来事ですが、しずかちゃんの日常がいかに地獄だったのかがよくわかります。

自分が出した道具を使って、しずかちゃんが亡くなってしまった、とタコピーは罪悪感を感じます。

ところでこの1話目のタイトルは『2016年のきみへ』となっています。

このタイトルの意図は、アニメの世界だけの話ではない、現実に起きていることですよ!という、作者からの強烈なメッセージではないでしょうか。

2016年に小学校4年生(10歳)ということは、その子どもたちは今2025年ですので、19歳あたりになっているということでしょうか。

現在も進行中ですよ!!(早くなんとかしないと!)と。

 

話しを元に戻すと、タコピーは初めにしずかちゃんと出会った時に写真を撮ります。実はそのカメラは、写真を撮った時間に戻れるという機能がありました。そこでタコピーは、その時間に戻ることにします。

何とかしずかちゃんが死ななくて済むようにしようと。

しずかちゃんはまりなちゃんからいじめを受けていたわけですが、それに気付かないタコピーは、表面的な対策をして、さらにまりなちゃんを怒らせ、しずかちゃんを追い込むことになってしまいます。そのことにまた罪悪感を感じたタコピーは、まりなちゃんに殴られるしずかちゃんの身代わりになったり、、

タコピー目線で殴られることで、酷いいじめの事態の深刻さがさらに際立ちます。

そして、まりなちゃんが家に帰ると、そこには家庭崩壊が、、

1話目では、タコピーという存在は、ハッピー道具を駆使してあれこれしずかちゃんのために頑張ろうとするけれど、表面的にしか意図が汲めず、根本的な解決には至らないもの、として描かれています。タコピー自身も、しゃべり方含めてとても幼く、いじめのような問題は子ども同士ではどうにもならないと思わされる1話目でした。

 

第2話 タコピーの救済

第2話は学校での場面で、タコピーのおかげで先生からの質問の答えるしずかちゃんから始まります。

それを見てさらにイライラが募るまりなちゃん。

学校では、まりなちゃんの周りの友達はみんなまりなちゃんの味方をしていて、さらにその周りにいる子どもたちは、影のように描かれています。その影の描き方がちょっと不気味というか、まるで悪意を持っているように描かれています。

いじめは加害者は当然ですが、無関心を装い、見てみぬふりをする周囲はもっと悪いと言われたりします。

でも、私は子どもに子どもの監視や仲介などをさせるのは、いろんな意味で危険だと思いますし、一番の悪は気付いているはずの学校の先生だと思いました。この先生は、保護者同士の関係性ももしかしたら把握しているのかもしれません。だからこそ、面倒なことに首を突っ込みたくないという。自分の手に負えないと思っているなら、深刻な事態になる前に他の先生にも相談をしないといけないでしょうし、個別に保護者から聞き取りをするなどの対応をするべきなのでしょう。

 

そして、しずかちゃんと飼い犬のチャッピーの散歩コースに待ち伏せをして、嫌がらせをするまりなちゃん。

それを防ごうと何度もタイムループをして散歩コースを変えるタコピーでしたが、いくら変えてもまりなちゃんはチャッピーに咬まれ、チャッピーは保健所に連れていかれます。これはおそらく、手を噛まれるようにまりなちゃんはわざと手に何かを塗っていたと思われます。のちにまりなちゃん自身が『うまく行った』と言っているシーンから、そのことがわかります。

この辺りから、同じクラスの東くんだけが、いじめに気付いて何とか出来ることはないかと考えるようになります。

しずかちゃんは、犬のチャッピーだけが自分の味方であり、生きる支えでした。いじめや家庭の崩壊があっても、チャッピーが居ればなんとか生きていける、そんな存在でした。そのチャッピーが保健所に連れていかれ、失意のどん底に突き落とされることになります。その次の日に、あの出来事が起きてしまいます。

本当にいじめっ子というのは、相手の嫌がることをよく思いつくものなんです。意地悪の嗅覚が鋭いというか。なぜそのような鋭い武器を身につけるようになるのか。それは大抵の場合、自分の身に虐待などの重大な不幸が起きているということが背景にあります。それを埋め合わせるために、その不幸の大きさに見合う鋭い武器を持って対象にぶつけるしか生きていく道が無いということなのかもしれません。いじめっ子も生きるか死ぬかの瀬戸際であることがわかります。

 

まりなちゃんの家庭は、夫婦仲が悪く、父親が出て行ってしまったりしています。父親はしずかちゃんの母親が働く夜のお店に出入りしているのでしょう。この時点では具体的には描かれていませんが、まりなちゃんが『あばずれ』と言うように、本当に体の関係まであったのかはわかりませんし、単なるお客とホステスのような関係だったのかもしれません。それをおそらく毎晩のようにまりなちゃんは母親から聞かされていたのだと考えられます。

この教訓は、夫婦仲が悪い場合、それをどちらかが悪と決めつけて親が子どもに言いつけるというのは出来るだけ避けた方が良いということです。たとえ離婚することになったとしても。子どもは言われたことをそのまま受け取るしかありませんし、自分のせいと感じることもありますので、自己肯定感を下げ、落ち着きがなくなり情緒を不安定にさせることもあります。酷い夫婦喧嘩やDVを子どもに見せるのは虐待と言われるゆえんです。今後の社会性の発達やコミュニケーション能力に大きく影響してしまう可能性があるのです。
それでもタコピーは何とかしなくては!しずかちゃんに笑顔でいて欲しい!という強い思いから、まりなちゃんをあの”ハッピーカメラ”で殴り、殺してしまいます。
いつもまりなちゃんが居なくなれば(でも無理だ。そんな世界はあり得ない。)、、と絶望していたしずかちゃんは『凄いね!ありがとう!』と笑みを浮かべてタコピーに感謝します。
このしずかちゃんの言葉は、いじめられっ子の実は切実でとても率直な気持ちを表しています。それでも『そんな酷い、、』と評する人もいるのかもしれませんが、その率直なしずかちゃんの気持ちに今の大人は向き合う必要があるのだと思います。まりなちゃんが居なくなることこそがこの時のしずかちゃんにとっての救済だったのです。

令和4年度の文部科学省の調査によると、小・中・高等学校および特別支援学校でのいじめの認知件数は732,568件で、前年度から50,620件増加し過去最多となりました。特に生命や心身などに重大な被害があった疑いのある「重大事態」は1,306件と、こちらも過去最多を更新しました。

第3話 タコピーの告解

タイトルにある告解という言葉ですが、
告解(こっかい)は、キリスト教、特にカトリック教会で信者が司祭に自らの罪を告白し、神の赦しを求める儀式を指します。これは「ゆるしの秘跡」とも呼ばれ、信者はこの儀式を通じて神との関係を修復し、精神的な平安を得るとされています。
タコピーは、まりなちゃんを殺してしまったことに罪悪感を持ちます。
『これでよかったのか』と。
その罪悪感をぬぐうため、告解の行動に出ます。
現場から去る時に、しずかちゃんを心配してつけてきた東くんに見つかり、何が起きたのか伝わってしまいます。
タコピーとしずかちゃんは、まりなちゃんが死んでしまったことに対して、最初あまり重大なことと受け止められずに、東くんに責められたしずかちゃんを見てタコピーはフォローをしようとさえします。
東くんは、このような事態になってしまったら警察に行くしかなく、しずかちゃんは少年院に入ることになるととても現実的な分析をします。
宇宙人がやったなんて、誰も信じないからと。
東くんは本で読んだと言っていましたが、罪を軽くするために自首を勧めるなど、とても頭がよく、冷静な判断が出来て、とても気も回る子どもに見えます。
東くんから自首以外の対処方法を聞き、夢が叶うと言われる四葉のクローバーを拾いながら隠ぺいをしようと決めるしずかちゃん。
一度はあり得ない!と拒絶を示めす東くんでしたが、頭の中で声が聞こえてきます。
『ねえ、何で出来ないの?』
それは東くんが母親からテストで100点が取れなかった時に言われる言葉でした。
しずかちゃんから手を握られ、一緒に隠ぺいすることを頼まれると、
『僕にも出来る!』
と、いつも出来ない出来ないと母親から言われていることとは反対に、しずかちゃんから頼られ、今度こそそれを覆せると感じ、同時にしずかちゃんのことを好きな自分も自覚することになるのでした。
いつも身近な大人などから自己肯定感が下がるような関わりをされた子どもは、どこかで自信になるようなことを探そうとします。生きる価値を見出すために、無意識にバランスを取ろうとするんですね。その対象が動物であったり、クラスで弱い立場の子どもであったり。今では教育虐待という言葉もあるくらい、家庭内で勉強をさせる場合も、子どものタイプや力を見ながら支援することがとても大切なことなんです。
タコピーは、まりなちゃんを隠すことや自分がまりなちゃんとして生きていくことに疑問を感じますが、話し方でバレてしまうとしずかちゃんに指摘された瞬間、まりなちゃんとして生きていくことを決意します。
この瞬間は、とても不思議な切り替わり方だと思いましたが、よく考えると3歳児が困ったり思い通りにいかなくて泣いたり喚いたりしても、大人が何か気を紛らわせることをすると、瞬時に切り替わることがありますが、それによく似ています。振り返ってみても、空気が読めない、相手の気持ちがわからない、快不快、楽しい怖いというような単純な情緒で自他の区別が曖昧、ファンタジーの世界に生きている(存在そのものがファンタジーですが笑)など、かなり年少さんっぽいですね。
ここからまたタコピー視点のアングルに変わり、リアルなまりなちゃんの私生活を知ることになります。まりなちゃんの両親は不仲で喧嘩が絶えない様子があり、父親のキャバクラ(2話での夜のお店はキャバクラでした)通いを母親から責められていますが『自分のお金で何しようが勝手だろう!』という理屈を返していました。そのキャバクラで働いているのが、しずかちゃんのお母さんなのでしょう。第2回でも申しましたが、しずかちゃんの母親とまりなちゃんの父親は、結局はどのような関係性かはこの時点でもハッキリはわからないですね。
母が手作り教室で作ったカーテンを留めるタッセルが飛んできて自分の顔に当たっても、激しい夫婦喧嘩を見ても、『よくおしゃべりをしている』とても仲良しとしか見えないタコピーでしたが、夏休みにしずかちゃんと東くんの3人で東京へ行き、チャッピーと会う作戦を立てます。
子どもの頃、友達だけでの作戦会議って、本当に楽しくてワクワクしましたよね!その様子が素敵な演出で描かれています。その時、東くんの兄潤也が通り、東くんは『バイト行くのでお母さんをなだめておいて』と頼まれ、しぶしぶ了解します。兄の優秀さに嫉妬している東くんは、『お小遣いももらっているし、バイトする必要なんてないんだ』と怒りにも似た嘆きを吐露します。するとしずかちゃんは『とっちゃえばいいじゃん!(潤也が大事にしている彼女とお揃いの)指輪。そうしたらショックでバイト辞めるよ』と東くんに勧めますが、東くんは一旦は否定しますが『あずまくんなら出来そう』とまた頼られたことで、行動に移してしまいます。
自分の評価が低い子どもって、何かと人に頼られると嬉しいものなんですよね。ですので、東くんもここぞとばかり頑張ろうとします。しかも、好きな子に言われたら猶更です。(ちょっと話はズレるかもしれませんが、子どもの支援者の中にも、東くんのようなタイプの方が居るのかもしれません。)重大な事件が起きているのに、子ども同士で解決しようとすると、とても稚拙な結論が出てしまうことがあり、さらに事態を悪化させてしまうことがありますので、まりなちゃんを殺してしまったこともそうですが、取り返しがつかなくなるまでに、周囲の大人が介入して支援することがとても重要になります。
結局、指輪を盗むことに失敗した東くんとタコピーでしたが、その時のタコピーの『結局指輪は盗れなかったっぴね』という言葉に自分は出来ない子と母親から言われ続けたことを思い出し、東くんは落ち込みます。そして、しずかちゃんに報告すると大好きなしずかちゃんからも笑われ、ついに感情があふれ出し、大泣きしてしまいます。
そんなことがありながらも、3人はとても仲良くなり、子どもらしく楽しく遊んだりして夏を過ごしますが、、
まりなちゃんの姿でまりなちゃんの家に帰ったタコピーは、『パパの所にくるか?』とまりなちゃんの父親から言われ、東京に一足先に行ける!と思ったタコピーは『行きたい!っぴ!』と大喜びします。父親はまりなちゃんの意外な反応に『おお、おう、来ちゃうかパパの所に』と全く感情がこもっていない返事をします。まりなちゃんの子育ては、最近はほぼ母親任せだったんだろうということが推測できます。父親はまりなちゃんの変化を明るくなったと前向きに捉えていますが、母親は変なしゃべり方やこれまでと違う振る舞い方に疑問を持ち、おかしいと感じ始めます。そして、母親の味方をせず、すっかり変わってしまったまりなちゃん(タコピー)を殴りつけます。絶対に何かおかしいと確信した母親は、『お願いします。まりなを返してください。お腹を痛めて生んだ大切な娘なんです。』と泣き崩れます。
『まりなちゃんはしずかちゃんに酷いことをする、でも。。』そこでタコピーは深く考え始めます。
過去に家族3人がとても仲が良く、幸せだったことを知り『まりなちゃん、ごめんなさい。まりなちゃんのパパとママ、まりなちゃんじゃなくてごめんなさい。一緒に居られなくしてごめんなさい。まりなちゃん殺してごめんなさい』と、ようやく取り返しがつかないことをした自分に気付き、号泣するのでした。
しずかちゃんを笑顔にするために、まりなちゃんを殺してしまったタコピーですが、両親のまりなちゃんへの想いを知ることで、ようやく自分の犯した過ちに気付くことが出来ました。しずかちゃんを笑顔にするためと言っても、何か違う方法があったのではないかって。このことは、いじめられた子どもだけを守り、いじめっこを排除したところで、何も解決しないということを意味しています。いじめをなくすためには、いじめっこにはどのような背景があるのかも考える必要があるということでしょう。

 


 

ここまで、一保育士がタコピーの原罪を見たら 前編をお読みいただきありがとうございました!

一部でとても話題になっているタコピーの原罪という作品ですが、今の子どもが置かれている現状をリアルに表している作品となっています。世の中的には、子どもの話は興味関心が薄いと言われていますが、子どもたちは未来そのものです。より良い未来の社会を築くため、子どものことに少しでも興味を持って頂けたらという思いで書いてみました。
ぜひ、今の子どもが置かれている境遇に関心を持って頂けたら幸いです。
4話からの後編に続きます。

 

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